第12章 やまおり(公式戦after.)
ろくに味の善し悪しも分からない茶を那由太すすっていると、成部は勝手に語り出す。
「ジョン汰に出会ったのは十年前、我がまだグレていた頃だ……」
完璧超人みたいな成部にも反抗期はあったのか、と那由太は思う。
「習い事をばっくれて歩いていた我は、川を見ていた。すると川の波とは明らかに違う、動く箱が流れてきてな。我はそれを拾ってみた。そして開くと中にはげた犬がいるではないか。寒いのか恐怖からかブルブル震えるそれが、たまらなく愛おしくなってしまって、我は服の中に犬を入れ温めながら動物病院に向かった。最近の動物病院はカードも使えるので助かった。我は家に犬を連れて帰り、家を建てた」
―――『家を建てた』?
まさか……、
「この家がジョン汰の家だ」
まさかだった……。
「ジョン汰は我が帰ってくるといつも必ずしっぽを振りながら出迎えてくれた」
―――はばかり等十はある!と成部が誇らしげに言う。
「食事も風呂も寝る時もずっと一緒でな」
―――寝る時等重いが必ず我の胸の上で丸くなって寝ていてなあ、と那由太を撫でながら言う、成部。
「ちょっと待ってくださいね。犬は毛がなかったんですか?」
「ああ、最初はひふ病なのかと思ったが元から体には毛が無い犬だったらしい」
―――確かに、人間には被毛という程の毛は無いが……と那由太は頭を抱える。
「我がジョン汰邸から帰って来ないから、ジョン汰を他所にやるとか言われて我は真人間になったのだ」
「それで犬が亡くなったのは?」
「我が十六の時だ」