第12章 やまおり(公式戦after.)
一席打たせれば成部は負け無しだ。
三年間一度も『かとる』落ちをしていない。
多分これからも。
成部はいつも那由太を通して『誰か』を視ていて―――それは瞳の『翳り』で、―――いつも彼に向けられる態度は全て代償行為なのだ。
「紅茶で大丈夫です」
成部がかけるのを待って少し離れた場所に座った。
「何をしている、那由太は膝に座るのだ」
―――やはり変わらない。
那由太が膝に座れば、納得いったとばかりの嘆息が聞こえる。
お茶を飲む。
成部も茶を飲んでる。
「ジョン汰……」
茶を飲み終わったのか背中から抱きしめられた。
又か―――と思いながら、話を振ってみる。
「ジョン汰とは誰ですか?」
「我の永遠の愛犬だ」
犬か何かペットであるのは言動からして察していたが、それに『似ている』と言われるのは喜んでいいものだろうか?