第12章 やまおり(公式戦after.)
「那由太は我のなのだぞ」
タオルでゴシゴシ下半身をふかれて痛い。
「痛いです成部様!」
叫べば、手をゆるめる。
『我の』と言いながら『何故『独占権』を買わないのか』と聞いた事があった。
―――『我からもちかけるのではない。お前から我の懐に入ってくれるのでなければ意味がない』。
成部はそう言った。
それがどういう意味でどうしたら良いのかも分からない。
成部の専属になりたい訳ではない。ただ、時々その瞳の中に見える『翳り』を視る度にたまらなく胸がぎゅっと締めつけられるのだ。
すっかり服を着直すと今度は応接室の様な場所に連れてこられる。
階段の付いたソファにローテーブル。
そこには既にお茶等が用意されていた。
「風呂に入ったら水分補給だ」
―――紅茶は嫌いか?
優しい調子で聞いてくる成部は気持ち悪い位だ。
普段だってそんなに当たりちらす、という態度ではないがだからといって、それが『優しい』の範囲に入るのか分からない。
―――『たろ』になってから、自分に『いっぷ』を仕掛けようとした生徒もいる。
だが、『那由太は今我をあっためる仕事をしているのだ。文句があるなら勝負をするか?』と、成部に言われてしまって『やってやるよ!』とはならないのだ。
成部がランカーでないのは、ひとえに『金』というものに執着がないからで。