
第19章 もう1人のメンバー

「こんにちは、待ったかな?」
それから数日後。俺はまた、カイトさんと会う約束をしていた。なぜなのか分からないが、おんりーちゃんに会わせたい人がいる、と言われてすっかりいつもの待ち合わせ場所になったところにいると、カイトさんは綺麗な女の人を連れていてびっくりした。
「初めまして!」
「あ、ああ……初めまして……」
突然の女の人に戸惑いながら挨拶をする俺。誰だろう、カイトさんの彼女? だとしてもなんで俺に紹介なんて……と困惑が拭い切れないでいると、とりあえず静かに話せる場所へ、と近くの喫茶店に入って行った。
「私、メーディなの。裏方だから、あまり知ってる人いないよね」
「えっ」
一瞬息が詰まった。知らない訳がない。ジニアのファンならきっと誰もが知っている。ジニアの裏方スタッフ、メーディさん。こんなところで会えるなんて?! てかなんで急に?!?!
「知ってますよ……! ジニアのファンなんです……! メーディさんって、いつもリミックスとか絵も描いている……」
言葉が詰まる。感極まるってこの瞬間なんだろう。泣きはしないけど。ファンとしてリア度キング並(もはやどういう意味か分からないくらいに思考停止状態)の人と、いきなりリアルで会えるとは思わなくて俺は自分の顔を覆った。
「ハハッ、そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ。紹介して良かった」とメーディさんの隣にいるカイトさんが笑う。「じゃあ、ちょっと俺、席外すね。二人で先に何か頼んでて、奢るから」
「え」
そう言い残してさっさと喫茶店を出て行くカイトさん。いきなり友達の友達と取り残された気分で俺の中の困惑がまた戻ってきた。どういうこと? カイトさんは俺とメーディさんに会わせて何をさせたいの?
俺はカイトさんが立ち去ったあとの喫茶店の扉をしばらく見つめていた。すると向かいの席のメーディさんが、ようやく口を開いた。
「もしかしてだけど……カイトになんの説明もなくここに連れて来られちゃった感じ?」
メーディさんの特徴的なピアスリングが揺れた。俺は頷いた。
「はい……」
と俺が答えると、あー、なるほどねぇとメーディさんは意味深そうに横を向いた。それからメーディさんは少し間を置いて、こんなことを切り出した。
「私は、恋のお悩みって聞いて来たんだけど」
「……え?」
話が掴めなくて、俺はメーディさんの茶色い目を見つめた。
