第17章 君だったから
「じゃあ……」
「あの」俺は切り出した。「また、どこかに出掛けましょう。楽しかったです」
カイトさんと会うのが、ここで最後にはしたくなかったから。カイトさんが、俺の発言に目を丸くしていたのをよく覚えている。
それから、いつも通りに笑ったから、俺は安心して。
「俺も。……あ、そうだ。連絡先交換しようよ」
とカイトさんはスマホを取り出した。カイトさんのスマホは彼のイメージカラーと同じく黄色だった。「カイト」という名前は青を連想しやすいが、ジニアで先にメンバーだったエムルートさんのイメージカラーが青だったから、カイトさんは黄色になったらしい。
……別に、カイトさんカラーが黄色だから好きになった訳じゃないけど。
俺もスマホを取り出して連絡先を交換する。ドズル社として一緒に撮影した時にグループ通話アプリに連絡先は入っていたけど、こっちのメッセージアプリはスタンプが送れるし……親密度も上がる気がしているから連絡先を交換する。下心なんてない。ただ純粋に、カイトさんと仲良くなりたいだけだ。
「じゃあまた」
「また」
言葉短く、俺たちは駅前で別れた。だが俺の心の中は大荒れだった。あのカイトさんと個人的に連絡先交換しちゃったこと。あの展望台で夜景を見たこと。
あの景色をしっかり胸に刻んで置こう。
俺は気づいたら、スマホを胸に抱いていた。スマホで夜景撮るの忘れちゃったな。