第17章 君だったから
「最後のベット爆破、カッコよく決まりましたしね」
と俺が言ってみる。しかし、カイトさんからなんの反応もなくて俺は内心焦った。カイトさん? 俺は呼び掛けながらカイトさんへ目を向けた。
カイトさんは、ぎゅっと口を結んでこちらを見つめていた。俺はそれがどういう心境なのか分からず困惑した。
「えっと、カイトさん……」
「ごめんごめん、おんりーちゃんに褒められたのが嬉しくて感極まっちゃったよ」
さっと横を向いて顔を隠すようにしたカイトさんだったが、目が少し潤んでいたようにも見えた気がした。暗くてよく見えなかったけど……。
「帰ろっか」
カイトさんは柵から離れて歩き出した。カイトさんは、もう俺の手を引いて歩いたりはしなかった。俺は慌てて後ろをついて行く。足が長いな。背が高いカイトさんが、ちょっと羨ましかった。
展望台のある公園を後にして、どんどんと街の方へと向かって行くカイトさんの後ろを俺は歩き続けた。カイトさんは一度もこちらを振り向かない。やっぱり俺、変なこと言ったんじゃないか。俺はカイトさんの大きな背中を見つめながら不安になっていた。
そして、夜でも喧騒溢れる都会らしさある駅前まで着いた時にカイトさんはようやく振り向いてくれた。笑ってはいたけど、あの時無邪気に笑っていたカイトさんとは別物みたいだった。きっと俺、ここで何か言わなきゃいけない。頭をフル回転させてカイトさんの言葉を待った。
「俺、ここからタクシーで帰るよ。おんりーちゃんは電車?」
「はい」
ここでようやく、カイトさんは俺のために駅前までお見送りしてくれたのだと気づく。