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黄色い夜景の歌

第16章 それは駆け落ち同然に


 階段を上がり切ったところで、カイトさんがそう言った。俺は顔を上げた。そこは、小さな高台だった。
 カイトさんは俺から手を離し、高台の柵へと向かう。俺もゆっくりとついて行く。もう暗さを怖がらなくて良かったからだ。
「こんなところがあったんですね……」
 俺はとうとう言葉を零した。眼下には、色とりどりに輝く夜景が広がっていたのだ。
「ここ、俺の穴場。なんかあった時もない時も、よくここに来て夜景を見に来ているんだ」
 とカイトさんは言って夜景に視線を向ける。夜景に照らされるカイトさんの横顔が、綺麗だった。
「この辺りに住んでいるんですか?」
 俺は自然と会話をしていた。
「前はね。今はもっと都心の方に住んでいるけど」それからカイトさんは夜景を指さした。「あの辺りかなぁ。ほら、あのマンションの……んー、やっぱりここからは見えないかも」
 ハハッと笑うカイトさんが子どもみたいに無邪気だった。何よりそう笑っているカイトさんの隣で、この時間を共に過ごしているんだという優越感っていうとなんか嫌な言い方だけど、俺はそれが嬉しかった。
「俺、嬉しいです。カイトさんと一緒に見られて」
 ら抜き言葉に気をつけながら俺は素直に感想を伝えた。するとカイトさんはますます笑って、俺もって返してくれる。俺はしばらく、夜景を眺めていた。
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