第9章 GG
結果、俺たちは二位で試合が終わってしまった。仕方なかったとはいえ、後方の奇襲警戒をしなかった俺も悪かったと思う。
「申し訳ない……」と本当に申し訳なさそうにカイトさんが謝ってきた。「俺、この子好きで使ってるんだけど、最後まで生き残ると決定打に欠けるんだよね」
決定打──そんなことない。チームの責任だから誰が悪いとかない。俺は自分も悪かったとかMENも前向きなこと言ってくれていたけれど、カイトさんをどれくらいフォロー出来たのか俺には分からない。
その後、俺たちは解散して配信を終えたが、カイトさんが最後に言った言葉が妙に残っていた。ベットで仰向けに寝転がる。なんでこんなにカイトさんの言葉が気になっているんだろうとなぜか勝手に悩んでいて思い出した。昔のジニアのこと。
ジニアは、数年前に結成された歌手グループである。元気ハツラツなクレナイさんとイケボなエムルートさん、可愛いアルくんや両声類のランさんと違って、突出した能力がある訳ではないカイトさんにしょっちゅう誹謗中傷が投げられていたのだ。
カイトいらなくね?
うっかり見てしまったコメント欄にそんな一言があった気がする。もう一回見た時はなくなっていたから、俺の見間違いだと思いたいけど。
俺はゲーム実況や配信を始めるまで、特段「推し」というものがなかった。与えられたものは普通に好きになるというよりは、愛着という言葉が近いと思う。俺はいつもそんな感じで生きてきた。
そうして俺が声なしの時から動画投稿を始めて、ドズル社に入って、動画や配信の世界に詳しくなって。そんな時に出会ったのがカイトさんの歌声だった。男性があんなに美しく歌うことがあるんだ。衝撃と感動は、今でも覚えている。