第7章 配信当日
「ドズル社さんみたいに、ハート0,5とか足元TNTとか無理ですよ」
「まぁ普通はしないですよねぇ」
その言葉に俺がそう言うと、カイトさんは畳み掛けるように褒め殺しを始めた。
「ほんと、だからこそドズル社さんはすごいんですよ! それに前おんりーちゃん、ハート0,5は温いって言ってましたよね? もうカッコイイ猛者しか言えないセリフじゃんって思ってて」
それにアレも知ってますよ、おんりーちゃんの有名なセリフ! とまで言われ、言葉を詰まらせていたところにMENが拍車をかけてきた。
「ほら、カイトさんのために言ってやるんだ、おんりー!」
なんでこのタイミングなんだよ、と恥ずかしさより緊張が勝って口ごもっていると、真横から銃声が鳴り響いた。
「あ、おんりーちゃん、そこ回復が間に合わないよ!」
「えっ」
いつの間にか始まっていたゲーム画面の試合。俺は何も出来ずにダウン。動揺していたとはいえ、ここまで何も出来なかったのは初めてだ。
「す、すみませんっ」
俺がすぐに謝ると、MENはガハハと笑うばかり。カイトさんも笑ってはいたけど迅速な動きで起こしてくれた。カイトさんが回復メインキャラで助かった。立て直しが早い。
「ありがとうございます」
とお礼は言ったけど、憧れの人の前で凡ミスしたのは、俺のプライドが許さなかった。