【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第5章 花街に毒の華が咲く
「…私の婚約者は宴の会には不在でしたし…、他の方が私に簪を贈るのは仕方ない事です。」
「…その婚約者も他の男から簪を貰って浮かれている婚約者を見なくて良かったと思うよ。」
壬氏の言葉に、明らかに月娘の顔はムッとした。
「……折れないのね。」
「俺は謝らない。薬屋に簪を挿したって悪い事はしていない。」
「………………。」
2人共折れないので、しばらく絡み合った目線は鋭いモノだった。
「…ああそう…。なら別にいいわよ。」
そう言うと月娘は壬氏に背を向けて執務室から出て行った。
僑香は慌てて壬氏に一礼をすると、月娘の後をついて行った。
「………………。」
月娘の足音が聞こえなくなるまで、壬氏と高順は黙ってその場から動かなかった。
「………壬氏様…。」
「うるさい、聞きたくない。」
今の態度が悪かったと分かっていても、今は説教は聞きたく無かった。
「…私は早く仲直りする事をおすすめしますよ。」
また月娘が何かしでかすのでは無いかと、嫌な予感がする。