【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第5章 花街に毒の華が咲く
「…はぁ…壬氏…。」
そんな壬氏の態度にため息を吐くと、月娘は扇を取って口元を見せて笑って見せた。
「私が目の前に居たら、簪を挿したくなるのは当たり前でしょう?」
そうして挑発的に壬氏を見る月娘に、壬氏は一瞬言葉を飲んだ。
分かっている。
そんな風習がある宴の会で、月娘が居たら誰だって我先に簪を贈るだろう。
「…簪は直接髪に飾られたんだな。」
「まぁそうですね…、みんなそれは美しい詩と共に挿してくれたわ。」
売り言葉に買い言葉でどんどん事態は悪化していく。
高順と僑香はもう息を吐く事さえ自由に出来なかった。
ただ大人しく気配を消している。
つまりの所。
壬氏が月娘を見つけた時には既に沢山の簪を貰っていて。
それが壬氏はすこぶる気に入らなかったのだ。
自分が用意した簪を渡す事も出来ないほどに。
月娘は月娘で、壬氏が皇弟の席を空けた事が気に入らなかった。
久しぶりに公の場で瑞月に会えると思っていたのに、園遊会に居たのは宦官の壬氏だった。