【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第5章 花街に毒の華が咲く
執務室の出入り口の扉の前に、中にいる壬氏を睨み付けている月娘が立っていた。
扇で口元を隠しているが、その目線だけで機嫌が悪いのはすぐに分かる。
隣にいる僑香は気まずそうに顔を俯かせていた。
間違い無く聞かれた。
月娘と僑香のが表情を見て高順は項垂れた。
「誰が誰に簪を挿したかって聞いているのよ。壬氏。」
月娘はもう一度低い声で壬氏に問い詰めた。
「月娘様!壬氏様は月娘様にはちゃんと皇室の模様を施していた簪を用意していました!」
慌てて高順は月娘の前に出で説明した。
「……にはって何?初めから猫猫の分は用意していたの?」
全くの逆効果だった。
余計に月娘の目付きが険しくなった。
「……お前も飾る場所が無い位に簪が挿さってたけどな。」
壬氏の口調が素に戻っていた。
宥めるのでは無く、月娘とやり合おうと言う事だ。
余計に拗れそうな予感に、高順と僑香は薄っすらと気配を消し始めた。