【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第5章 花街に毒の華が咲く
先日行われた園遊会の後の壬氏はすこぶる機嫌が悪かった。
巻物を睨み付けて一向に進まない公務に高順はため息を吐いた。
「…素が出てますよ……。」
機嫌の悪さを隠さずに、いつもより態度悪く椅子に座る壬氏に、高順は注意をした。
「…高順…見たか?園遊会での月娘の姿を。」
壬氏をここまで揺さぶれるのは月娘しか居ない。
高順は園遊会での月娘を思い出す。
来賓席に座っていた月娘の頭には、飾る所がない程の簪が挿さっていた。
「なんで後宮の外の人間が簪を贈られているんだ?」
ご丁寧に挿してもらって。
園遊会での簪は、後宮の人間を勧誘する意味がある。
そうでなければ……。
他の理由ならば壬氏は決して怒りをおさめる事は出来ない。
「壬氏様が小猫に簪を挿したからでは無いですか?」
月娘が壬氏を挑発する時は大抵、先に壬氏が何かしらやらかしている。
「へー…、誰が誰に簪を挿したって?」
透き通る低い声が、壬氏の執務室に響いた。
その声に壬氏と高順は大きく体を跳ねらせて声がした方向を見た。