【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第4章 後宮の外に毒の華が咲く④
その月娘を愛おしそうに見ている壬氏の表情に、僑香はジワっと涙が滲んだ。
「…わざわざ馬車を用意して頂かなくても…。」
皇室の馬車なんて目立ってしょうがない。
こっそりと帰りたいのだ。
「こんな夜更けなのだから、馬車と護衛は付けさせてくれ。」
「……………。」
壬氏が折れないから、月娘は仕方なく壬氏が用意した馬車に乗った。
別れを名残惜しそうに、壬氏はしばらく月娘を見送っていた。
「うっ…うっ…。」
「……………。」
馬車が走り出して、泣き出した僑香を月娘は不思議な顔で見ていた。
「何で貴方が泣いているのよ…。」
「うっ…嬉しいんです。やっとお嬢様と皇弟殿下の気持ちが通じ合って……。」
「………………。」
涙を拭いながら嬉し泣きをしている僑香を、月娘はスンとした顔で目を細めて見ていた。
「……貴方って純粋なのね…僑香…。」
月娘はため息を吐くと、つまらなそうに言った。
「3年前だって、今日みたいに彼から沢山求められたわよ。」
無表情でそう言う月娘の言葉に、僑香の顔が赤くなる。
2人の夜伽を想像してしまいそうになる。