【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第3章 【R指定】後宮の外に毒の華が咲く③
更に服を脱ごうとする月娘の手を止めた。
「……………。」
月娘は相変わらず冷めた目で、顔を赤くしている壬氏を見下ろした。
「……もう抱いたくせに…。」
月娘の言葉に壬氏はギクっと肩を跳ねらせた。
「止まらなくて、散々抱いたくせに。」
「月娘!」
壬氏は咄嗟に手で月娘の口を塞いだ。
口を塞がられても、何か言いたそうに月娘は壬氏を見ていた。
あの日の夜。
もう瑞月と会わないと泣きながら怒っていた月娘を。
瑞月は決して離さなかった。
怒鳴り声を塞がれる様にした初めてのキスも。
暴れる月娘を押さえ付ける腕も。
全てが愛おしくて、最後は彼に縋り付いた。
離れようとした心などすぐに消される様に。
初めての痛みさえ嬉しくて。
流れていた涙はいつの間にか、瑞月が初めて自分の男になってくれた喜びの涙になっていた。
このまま彼と幸せに過ごせると思っていたのに。
その後も壬氏は、後宮から出てくる事は無かった。