【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第3章 【R指定】後宮の外に毒の華が咲く③
「東宮が育つまでなんで待てないんだ。」
「………………。」
なんで私がずっと待っていると思っているのだろう…。
必死に説いてくる壬氏に月娘は不思議だった。
なぜならこの男は、その先の約束をする事も無く。
ただ月娘が自分の側にずっと居ると思っている。
(この6年……私達の間に愛を育んできた時間はあったのだろうか…。)
彼の理想を一緒に支えられる様な。
そんな確かな甘い記憶なんて無かった。
あるのはいつも、こうして言い合う2人の思い出だけだ。
そしてその原因は壬氏にだってある。
月娘は壬氏の隣にある木箱をチラッと見た。
「瑞月様…その木箱は何ですか?」
媚薬を指され、壬氏の肩がビクッと跳ねた。
月娘は知っていた。
その箱の中身を。
高順が事前に中身も教えてくれた。
だからこうして傷付かずに冷静でいられる。
もし何も知らずに婚姻祝いで媚薬なんて貰ったら。
もっと酷い怒りとなっていたはずだ。