【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第18章 最終章
月娘の言葉に夏潤は顔を上げて月娘を見た。
月娘は表情を変える事なく夏潤に続けて言った。
「跪いて、私と殿下に忠誠を誓いなさい。そうすれば貴方を茘国と協定を結んでいる隣国で婿に入れさせてあげるわ。そこで一生を私と殿下の為に過ごしない。」
薄暗い牢獄の中で、月娘と夏潤の目が交わされた。
不思議な気持ちだった。
夏潤から逃げたかったし、彼を憎んでいた。
最後に罵倒でもしようとして会いに来たのに、まさか自分からこんな言葉が出てくるなんて思っても無かった。
夏潤は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにまたいつもの笑みを浮かべた。
「断るわ。」
そう短く返事をした夏潤に、月娘の目は細く歪んだ。
「ずっと心に決めている女が居る。そいつ以外と結ばれるなら戦場で死んだ方がマシだ。」
真っ直ぐに月娘を見ながら応える夏潤に、月娘は何も言わなかった。
静まり返った牢獄の中で、しばらく月娘と夏潤はお互いを見ていた。
「……馬鹿な男ね…。」