【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第18章 最終章
「彼を八旗の長城に行かせる事にした。」
壬氏の話を聞いて月娘は少しだけ目を細めた。
そこは国境にある長城で、茘国では1番隣国との戦が耐えない場所だった。
壬氏は隣国との戦が収まるまで夏潤を国に戻さない事を決めていた。
何百年と領土戦争を繰り返しているこの乱世で、それは夏潤が生きて国に帰れない事を示していた。
「…何か言いたい事はあるか?」
ただ黙って壬氏の話を聞いていた月娘に、壬氏は月娘の顔を覗いた。
「…いいえ瑞…。それでいいわ…。」
むしろ夏潤を死罪にしなかった事が彼なりの恩恵なのだろう。
壬氏は月娘が夏潤から逃げたがっていた事を知っていたし、憎んでいた事も理解した。
しかし、彼の死を望んでいるかと聞かれれば、月娘の本心は分からなかった。
ただ1つ分かるのは、月娘にとっても、僑香にとっても。
夏潤と長く過ごした幼馴染である事は変わり無かった。
月娘はそれ以上夏潤の話を、壬氏にする事は無かった。
だけど壬氏はこれから月娘が行う行動を予想していたのかも知れない。