【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第17章 【R18】毒の華は華麗に咲く②
壬氏と月娘は同じ目線を夏潤に向けていた。
その目線と壬氏の口調から、夏潤に向ける譲歩の気持ちは微塵も感じなかった。
「お前を見ててよく分かったよ夏潤。」
壬氏は少し目を細めて夏潤に言った。
「月娘が何故花街にまだ行って俺から離れようとしたのか…。」
壬氏の言葉に月娘は彼の横顔を見た。
その表情は月娘の気持ちを分かってあげられなかった悔しさが見てとれた。
「月娘が逃げたかった相手はお前だったんだな。夏潤。」
月娘はいつも何かに追われる様に皇室に入りたいと言っていた。
何度も壬氏に懇願した。
どんな思いで月娘が縋っていたのかも気が付かずに、壬氏は自分の気持ちを押し通した。
自分への後悔よりももっと強い怒りが夏潤に向かった。
「月娘にとっての毒は全部お前だったんだ。」
そう夏潤に言った壬氏を見て月娘は再び涙が出た。
人からの悪意に傷付き、壬氏だけが救いだったこの9年間。
今やっと月娘は、全ての感情を受け止めてくれた壬氏に、心の底から愛が溢れ出た。