【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第2章 後宮の外に毒の華が咲く②
部屋を出ようとする月娘に壬氏が声をかけた。
扉の前でゆっくりと月娘が振り返る。
「……あるからな…話す事……。」
そう言って眉間に皺を寄せても、ここで何も喋れない事を月娘は分かっていた。
悔しそうな壬氏の顔を見て、月娘はフッと笑った。
「あらそう…。婚姻後の挨拶の時にでも聞くわ。」
その顔は、お前に何が出来るのかと。
壬氏に言っている様だった。
壬氏を嘲笑って、月娘は部屋を出て行った。
「あー…私もそろそろ……。」
毒の出所まで分かったのなら、もう猫猫のする事も無くなっていた。
「薬屋。」
「うっ、はい。」
何も言わない壬氏をいい事に、そのまま部屋を出ようとしたが、やはり壬氏に引き止められた。
「…あの媚薬をもう一度作れ。」
「……媚薬ですか?」
「結婚祝いに枋家に送ってやろう。」
「………………。」
それでいいんですか?壬氏様…。
そうは思っても、猫猫はもうそれ以上何も言わなかった。
そう言った壬氏の顔が今にも泣きそうだったから。