【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第15章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑥
「今、あの扉に行けばお前は逃げられる。」
月娘は離れた唇から大きく息を吐いた。
部屋の扉がぼやっと見えたのは、自分が涙を流しているからだと気付くのに時間がかかった。
「月娘。お前は本当に俺と別れてここを出て行くのか?」
低い壬氏の声が聞こえた。
それはいつも聞いていた様な心地よい声では無かった。
目線の先にある扉は三重に見てた。
止める事のない涙のまま、月娘は両手で壬氏の体を押しのけた。
「っ!私は!もう瑞を待つ事は出来ない!!」
そんな月娘の言葉は。
壬氏の範疇だった。
月娘が拒否する事など、とっくに分かっていた。
だけど壬氏はそんな事を許す気にもならなかった。
この気持ちが月娘に沿っていなくても。
壬氏は月娘を手放す事など出来なかった。
壬氏は月娘の言葉を聞いて、キツく目を細めた。
そして再び月娘の唇を喰らった。
初めから、壬氏は月娘の意見を聞く気なんて無かった。