【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第15章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑥
「…殿下…。あれから2年です。」
最後に彼と2人きりで会ったのは、皇太子としてだった。
その時に月娘は壬氏に泣いて縋った。
このまま婚姻をしたいと。
すぐに皇居に入りたいと。
しかし壬氏は宦官になり、後宮入りした。
その後は、月娘に会わない様に逃げ回った。
かつて姿を見ればすぐに寄ってきた彼は、月娘が騒ぎを起こさなければ側にくる事も無い。
決められた人間しか入れない後宮で、月娘はひっそりと壬氏を見るだけだった。
「東宮が育つまで、婚姻を待ってくれると…。」
そう言った時に、壬氏は月娘がそう言わなかった事に気が付いた。
あの時、そうしなければ婚約すら辞めると言ったのは自分だったと思い出した。
「……月娘違うんだ。俺は月娘を正妃にしかしたくなくて……。」
『しょうがなく。』
続きの言葉を発する前に、壬氏は言葉をのんだ。
月娘の目が冷たく自分を見ているのが分かったからだ。