【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第15章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑥
「枋太師がおかしな事を言うんだ。」
月娘の肩を掴んでいる手に力が入る。
壬氏は無理して笑顔を作ろうとしているが、その表情は何かに怯えたいる様だった。
彼の手が震えていても、月娘は一切目を逸さなかった。
壬氏が何を言うのか分かっていて、そんな風に真っ直ぐ見てくる月娘に、壬氏は小さく呟いた。
「月娘が……俺との婚姻を望んでいないと。」
その表情は、月娘に否定してほしいと、そう言っている。
そんな懇願が見える壬氏に、月娘は唇を開いた。
「…殿下……。私達の縁はここで絶ちましょう。」
真っ直ぐ壬氏を見て言った月娘に、壬氏の表情が曇った。
その唇は何か言おうとして開くも、すぐに閉じた。
そしてゆっくりと月娘の肩から手を離した。
「……なぜ?」
壬氏がやっと漏らせたのは、その一言だった。
月娘に裏切られた様な気持ちが、そのまま表情に出ている。
月娘はその傷付いた様な壬氏の顔に怒りが湧いた。