【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第15章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑥
壬氏は宦官になった後の住まいを後宮内と宮中内に持っていた。
月娘が呼び出されたのは、宮中の壬氏の部屋だった。
僑香(キョウコウ)を西宮の離れに待機させて、月娘は壬氏の部屋に向かった。
執務室では無く部屋だと言う事が、壬氏が内情を語りたいのだと月娘に思わせた。
今日出向いたのは、枋(ホウ)太師にも言われている婚約破棄の為だ。
月娘は今更壬氏のその気遣いに心が揺れる事は無かった。
昔は壬氏の部屋に呼ばれたら、心を弾ませて向かっていた。
しかし今日は同じ道のりでも、足が重く見える景色も違った。
部屋の外に居る高順を見つけると、月娘は彼に目配せした。
「…月娘様が参りました。」
それだけ言うと、高順は部屋を開けて月娘を中に入れる。
「月娘!!」
月娘を見つけると、彼女が挨拶をする前にすぐに月娘の元に来た。
部屋の扉が閉められる頃には、彼の手は月娘の肩を掴んでいた。