【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
見つめる月娘の瞳には不安の色が広がっていた。
呼び出し方から今回はいつもの壬氏とは違う。
会えば溢れる笑みも今日は見られない。
月娘はグッと強く拳を握った。
「月娘。」
「はい。殿下。」
壬氏に呼ばれて、月娘は答えた。
平穏になろうとしても、自分の心臓の音が鼓膜まで響いている。
何?
瑞は何を考えているの?
壬氏の沈黙に冷や汗が流れた。
早く彼の言葉で安心したいのに、沈黙する彼の顔は月娘を余計に不安にさせていく。
「……婚姻式を延期する。」
壬氏の言葉に、月娘は一緒息を呑んだ。
「……喪があけるまでって事ですよね…。」
月娘の震えた唇は、同じように震えた声を出した。
大丈夫だ。
喪があけるまで婚姻式を伸ばす事は想定していた。
月娘の言葉に、壬氏は首を横に振った。
その瞬間に、月娘の心臓は大きく波打った。
「……月娘。俺は帝に東宮様が誕生するまで、誰とも結婚しない。」