【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
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月娘を呼び出して、待つ時間が嬉しくなかったのは初めての事だった。
トントントン……。
壬氏は執務室に座って、椅子の淵を指で叩いていた。
今日、月娘に婚姻を伸ばす事を伝えるのだ。
決めていた気持ちだったのに、ずっと言えずにいた。
伸ばし伸ばしにしていたツケを今払う時が来たのだ。
「月娘様が来ました。」
高順の言葉に、壬氏は俯いていた顔を上げた。
ギッと空いた扉に、月娘の姿を見た。
その月娘の姿を見て、壬氏は顔を顰める。
「…月娘…。」
壬氏はすぐに椅子から立ち上がって、月娘の側に向かった。
「……殿下…。」
「挨拶はいいから。」
壬氏はすぐに月娘の腰に手をやり、部屋の中に月娘を入れた。
そして丁寧に月娘を椅子に座らせた。
壬氏は床に片膝を付いた。
そしてゆっくりと月娘を見上げる。
胸が締め付けられる位に、愛おしい少女がそこにいた。