【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
側室としてすら婚姻がこんなに成し得ないとは思ってもいなかった。
壬氏が月娘を正妃にする為に時間を要しているなど。
夏潤や月娘には分かり得なかった。
だから、夏潤のその言葉はいつも月娘を不安にさせた。
「月娘様!!」
そんな2人に、僑香が慌てて部屋に入って来た。
「どうしたの?僑香…。」
大きく息を吐いて、僑香は月娘を見た。
「宮中から月娘様へ使いが寄せられました!!」
「!!!!」
月娘も夏潤もやっと冊封が届いたのだと思っただろう。
皇室の武官が月娘の部屋に入って来て、竹簡を広げた。
(竹簡?)
冊封では無かった。
月娘は竹簡を受け取ると、中を確認した。
そこにはー。
東宮に来いと、壬氏からの手紙だった。
皇命でも、冊封でも無くいつもの手紙でも無い。
月娘は固い竹簡を握ると、普段とは違う壬氏の行動に不安になった。
「……僑香、用意して、すぐに殿下の元に向かうわ…。」