【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
「夏兄様…。ご無事で良かったです…。」
月娘がそう言って笑うと、夏潤は月娘を抱きしめた。
この頃は彼を無事に思う気持ちと、憎む気持ち。
いつも心の奥に両方あって、月娘は夏潤を持て余していた。
昔は宮中へ行くより、この棟で僑香(キョウコウ)と夏潤と一緒に居る方が幸せだった。
なのに今となっては、月娘の1番の幸せを、夏潤が壊そうとしてくるのだ。
「…………………。」
月娘は夏潤の剣に付いている装飾品を見た。
壬氏の誕生日に、夏潤の分も一緒に作ったのだ。
悲しい事に、壬氏への贈り物は彼には届かなかったが……。
「月娘に冊封が届くと聞いたが…。」
月娘を抱き締めている腕に力が入った。
月娘は夏潤の胸の中で、一瞬目を見開いた。
「……今や国中が喪に服すしています…。そんな冊封は届きません…。」
「…そうか…。殿下は随分と悠長に過ごしている様だな。」
夏潤は自分が壬氏だったら、とっくに月娘を後宮入りさせていると思った。