【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第2章 後宮の外に毒の華が咲く②
その為、汚名を着せられて罪を被らないで後宮を出るのも。
無罪が分かり後宮を出るのも一緒なのだ。
だから今更壬氏に縋る様な事は何も無いのだ。
「壬氏様。渼妃が飲んだトリカブトが月娘様のトリカブトでない事はすぐに証明出来ます。」
「そうなのか?!」
初めから猫猫に喋らせていれば、月娘の汚名はすぐに拭たのだ。
(それなのに壬氏様は何がしたいのやら。)
月娘を問い詰めたり、あたかも自分を好きだから犯行におよんだと証言させたかったり。
色恋に悩まされて拗れた男のやる事は、本当に迷惑でしか無い。
「月娘様、胸にしまってある薬を出して下さい。」
「薬?」
猫猫にそう言われて、月娘は匂い袋に入っている紙に包んだ薬を出した。
「……よくトリカブトだって分かったわね…。」
「トリカブトはニラの様な強烈な匂いを放ちます。いくら薬にして匂い袋に入れていてもすぐに分かります。」
「だから薬ってなんだ?!」
猫猫が紙の中から豆粒並みの薬を取り出した。
その匂いに、壬氏は思わず鼻を摘んだ。