【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第2章 後宮の外に毒の華が咲く②
「……何故そんなに意地を張るんだ…。」
壬氏からしたら、月娘は意地を張っているのだ。
今日の事だけでは無い。
瑞月に会いに来ない事や。
声を掛けなければ、目を合わせない事。
それなのにずっと自分の側に居る。
月娘が自分を好きな事は探らなくても分かっている。
もう少し。
少しだけ。
昔の様にその好意を自分に向けて欲しいだけだった。
(なるほど…これは…。)
ただの痴話喧嘩だ。
しかも根深く相当厄介なやつだ。
花街で男女のイザコザを見てきた猫猫は、スンと興味なさそうに真顔になった。
これが痴話喧嘩ならいい迷惑だ。
犯人は明らかに月娘では無いのに、壬氏が撹乱しているのだから。
そして月娘も月娘で弁解すればいいものを、頑なに口を閉ざしている。
月娘は今更自分の呼び名が毒の華だろうが殺人の華だろうが、どうでもよかったのだ。
皇室に入るために品行方正でなければない時期はとっくに過ぎた。
瑞月の嫁になれないのなら。
その名前が何と呼ばれても心底どうでもいいのだ。