【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第13章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜④
月娘は気鬱な気持ちで枋家に戻った。
自分の棟に戻って潜門を抜けると、その匂いに伏せていた顔を上げた。
庭一面に梅の鉢が置かれていた。
梅の花は匂いが強く、庭に入った瞬間に月娘は梅の花の香りに包まれた。
「月娘。」
何故自分の庭に梅の花が飾られているかはすぐに分かった。
先日の梅狩りに参加させなかった壬氏が用意したモノだと。
そして梅の花の奥に、月娘の名前を呼んで笑っている壬氏を見つける。
皆んなに見せる気取った笑顔では無くて、月娘の知っている壬氏の笑顔だった。
「………ご用があるなら、先に知らせをくれてからご訪問したらどうですか?」
壬氏を見て、思わず緩んでしまいそうな顔を袖で隠して、ワザと冷たく言った。
そうしなければ、壬氏に会ったそれだけで、今までの冷遇を許してしまいそうになるからだ。
「月娘。怒ってる顔も可愛いけど、月娘の笑顔も見たい。」
その為に忙しい時間を抜けて、月娘に会いに来たのだから。