【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第13章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜④
「殿下の笑顔は素敵だったわ。」
(顔隠してるのに瑞の笑顔なんて分かるのかしら。)
「話す声も優しくて、とても楽しい会話だったわ。」
(………………。)
瑞は私と会った時はあんな飾った笑顔じゃないわよ。
会話はそうね……。
瑞は私の側に来ると、その唇は会話をあまりしない。
壬氏の唇はいつも月娘の頬に付けられて、月娘の名前を愛おしく呼ぶだけだ。
何度も何度も月娘の名前を呼んで、そしてまた優しく抱き締めてくる。
………もうどれくらい瑞に会っていないのだろう…。
あの皇太子殿下の気取った笑みでさえ、恋しくなる位だった。
早く冊封家に届けばいいのに…。
月娘は彼女達の会話を聞きながらそんな事を考えた。
皇室に木簡を渡して、3年前まで自分が居た女官見習い達の学び部屋をそっと横切った。
もう女官見習いでなくなった月娘でも、彼女達の面倒を見る為にたまに学びべ部屋に行くことがある。
本当の目的は、自分の後に後宮に入る妃を見定める為でもある。
彼女達の勉学の成果を老先生と一緒に採点をする。
いつか皇后妃になるための、月娘の仕事とも言えた。
だからそんな彼女達の会話も、こうして耳に入ってくるのだ。