【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第2章 後宮の外に毒の華が咲く②
普通なら、命乞いと共に自分の弁解をするのだろう。
きっと目の前の男の望んでいる私の姿もそうなのだろう。
自分に縋って欲しい、頼って欲しいとその顔は言っている。
月娘はそんな壬氏から目を逸らして俯いた。
そんな風に彼に縋った事があったのは。
自分との婚姻を取りやめにすると壬氏が言った時だ。
あの時はどんなに壬氏に縋って泣きついても、壬氏はその命を覆る事はしなかった。
散々縋りついて泣きついても見向きもしなかったくせに…。
今更頼って欲しいなんて、虫が良すぎると思った。
また、そんな事をしなくても、自分には何の罰も無いと分かっているのは。
実際無実なのと。
もし事実でも、下級妃の、それも生家も皇室と繋がりが無い様な妃の死くらいでは。
月娘ならこの程度の事件で罰せられないと分かっているから。
皇帝に守られている。
それは月娘の強みであって。
壬氏とは、その距離を広げるモノだった。
だけど、今更壬氏に縋るには。
過去の出来事が大き過ぎて素直になれなかった。