【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
月娘の棟に自由に入れる人間なんて僑香か夏潤しか居ない。
そして夏潤にはその動機がある事は分かっている。
『月娘を後宮に入れない為。』
夏潤の罪を公にして、彼を罰する事も出来た。
だけど夏潤が何故その様な事をしたのか、月娘には分かっていた。
月娘に幸せになって貰いたい。
彼の自己満のその判断にも、月娘は夏潤が自分の為にそうしてくれたと思った。
この時に、夏潤の罪を公にしていたら、この先の2人の関係がこんなにも歪になる事は無かったかもしれない。
だけど月娘には、この時は僑香や夏潤が1番自分の事を考えてくれている心の糧だった。
壬氏よりも。
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月娘は何も持たずに東宮に現れた。
その時の官僚達のざわめきと、壬氏の顔を今でも覚えている。
壬氏は何も持ってこなかった月娘に対して、最初は驚いた顔をしたが、ゆっくりとその目を伏せた。
月娘もまたその騒動の中、壬氏の顔を見た後に、同じ様に目を伏せた。