【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
壬氏の誕生日の当日。
月娘は桐の箱に入れていた彼への贈り物が無くなっている事に気が付いた。
「……なんで……。」
出来上がった房をちゃんと箱に詰めたはずだ。
それが箱を開けたら入っていなかった。
「………夏兄様…。」
月娘は咄嗟に夏潤の事を思い出した。
ワザと抜き取られた贈り物。
こんな事をするのは夏潤しか思い当たらなかったからだ。
「…月娘様…。」
僑香も不安そうに月娘の顔を見た。
月娘は持っている桐の箱が鳴る位、強く握ってその手は震えていた。
(……こんな事をするなんて……。)
今日皇太子殿下に贈り物をする事が、どう言う事か分かっている。
婚約して初めての公の場で、壬氏は月娘との事を正式に公表するつもりなのだろう。
そんな大事な場で壬氏への贈り物が無いのだ。
「…他の物を用意するわ。」
いや…ダメだ。
今から既製品を買う事は出来ない。
この習わしは、皇太子に手作りの贈り物をする事が重要なのだ。