【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
「皇室発表1つでお前を婚約者に迎えるとは…。随分と皇太子はお前に興味が無いんだな。」
「……瑞の事をそんな風に言わないで下さい。」
月娘は夏潤が払った絹の房を拾うと、机の上に置いた。
その手は少し震えている。
震えているその手を見て、夏潤は違った。
絶対に壬氏が月娘を幸せにする事は出来ない。
月娘は皇后になれる程高貴な存在だ。
だけど月娘の唯一は決して皇后ではない。
どうせ壬氏には他にも妃候補が居るのだから。
わざわざ月娘である意味は無い。
それよりも、自分の方が月娘を必要だと思ったし。
彼女を幸せに出来ると思っていた。
「…俺の小可愛子…。」
夏潤はいつもの様に月娘をそう呼ぶと、月娘の手を取った。
「……夏兄様……。」
月娘はその時初めて夏潤に違和感を覚えた。
自分を呼ぶその呼び名が、幼い子供を呼ぶ言葉ではなくて。
まるで恋人を呼んでいる様に聞こえたからだ。
そしてそれが、月娘と夏潤を違えた最初の瞬間だった。