【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
月娘のその言動に、夏潤は言い切れないほどの怒りを覚えた。
月娘が手に持っている絹の糸の束を夏潤は思い切り払った。
「っ夏兄様!!」
彼のその行動に、月娘は明らかに怒りの声を上げた。
「……俺は月娘が後宮入りをするのは許さない。」
夏潤の怒りは月娘に対してと。
月娘をこんな風に扱う壬氏に対してでもあった。
彼は理解出来ないのだった。
月娘を間近に見ている夏潤は、彼女が壬氏に何を望んでいるか分かっていた。
それは多分壬氏よりも。
そして壬氏の行動は同じ男としても許せない。
壬氏は真っ先に月娘に会いに来るべきだった。
そしてこのか弱い細い肩に触れ、彼女を抱き締めるべきだ。
自分ならそうする。
夏潤は壬氏の複雑な環境を理解出来なかったし、分かろうともしなかった。
ただあの男が自分よりも月娘を理解して、月娘を笑顔にさせれる。
そんな想像が到底出来なかった。