【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
「まだそうして皇太子に尽くしてるのか?」
そんな言葉を投げかけたのは、月娘がそれでも献身的に壬氏への誕生日の贈り物に編み物をしていたからだ。
月娘の手には壬氏の目の色の紫の絹の糸の束と、自分の目の色の翠緑の絹の束。
そしてその2色を絡める様に金糸の絹の束で佩玉に付ける房を編んでいた。
そんな月娘の行動に呆れた顔をした夏潤(ハユン)が声を掛けてきたのだ。
「…誕生日が近い夏兄様にも、剣の棹に付けれる房を編んでますよ。」
そう笑って月娘が言うと、一瞬夏潤は顔を赤くしてその体を固めた。
「……あんな事があったのに、まだ後宮に入りたいのか?」
夏潤は嬉しさよりも、月娘が後宮で受けた屈辱の怒りの方が強かった。
「………………。」
改めて他人からそう言われると、月娘は自身が受けた行為に対してやはり、金持ちが割り切れないと顔を歪めた。
「…皇太子殿下を敬称無しで呼ぶのは夏兄様位ですね。」
それでも夏潤の言葉をそらす様に月娘は笑いながら言った。