【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
月娘は皇室からの手紙を一切見なかった。
僑香が言った様に、これがめでたい事なのなら。
今自分が感じている感情はなんなのだろうか。
あの時。月娘が壬氏に求めていたモノは、この様な処遇で無くて。
ただ、彼の側に居たかった。
前帝が微かに肩に触れたその手に、言いようの無い嫌悪感を覚えた。
それでも彼が壬氏の父親だったから、必死にその感情を抑えて我慢をした。
父親に迷惑がかからない様に。
壬氏が傷付かない様に。
その気持ちから出た行動が、全て間違いだったと月娘は気付いた。
じゃなければ、父親がこうして月娘に罰を与える理由も。
壬氏が会いに来ない理由も、月娘には分からなかった。
(私が至らなかったから、父様は罰を与えて、瑞は私に会いに来ないのね…。)
あの時の壬氏の顔は月娘以上に傷付いている様に見えた。
そして少し見えた壬氏の嫌悪感は、月娘を責めている様にも見えた。
月娘は分からなかった。
壬氏の心が。
いつもこうして紙の上の言葉しか彼の気持ちを聞いた事が無いから。