【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
「……大切な者ならもっと隠しなさい。」
「………………。」
誰かに奪われる前に。
隣でそう言った安氏を見上げた。
「…もう隠しません。」
真っ直ぐに目を向けて、誓った様な顔で言う壬氏に、安氏は驚いて目を開けた。
こんなに真剣な壬氏の顔を今まで見た事が無かったからだ。
ずっと上手く隠せていると思っていた。
だけど成長した月娘は更に美しくなり。
会う度に壬氏さえ目を囚われるほどだった。
月娘は隠して収まる女では無い。
その事をハッキリと自覚出来た事件だった。
隠せないなら教えないと言えない。
あの美しい少女が誰のモノなのか。
「月娘との婚姻を発表します。」
皇太子としての責務を果たす決意は出来た。
今はまだ婚姻を結ぶ事は出来ない。
次々と妃の座を狙う欲望者がその後釜を狙おうとしているから。
「月娘は今から俺の婚約者です。」
それでも今よりはずっと月娘を守れると思っていた。
安氏の後押しもあり、壬氏の言葉はすぐに皇室の発表となった。
誰も枋太師の娘が壬氏の最初の妃になる事に異存は無かった。