【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
月娘を守っているつもりで何も出来ていなかった。
その自分自身への怒りに、壬氏に強い意志が芽生えた。
「月娘…。これからは絶対に俺が守るから…。」
「……瑞……。」
月娘は耐えられない様に、やっと壬氏の背中に腕を回した。
震えながら泣いて縋りついてくる小さな体に。
壬氏はその日誓った。
ーもう誰も、月娘に触れさせない。
彼女をそうであるべき存在にする事を強く誓ったのだ。
枋太師が月娘の肩を抱きながら皇居から出ていくのを。
壬氏は辛そうな顔で見ていた。
その2人の背中が、もう2度と皇居には来ないのではないかと。
そんな風に思わせた。
馬車に乗る時に、月娘はチラッと振り返って壬氏を見た。
不安そうなその顔を安心させたくて、笑顔を作りたかったのに出来なかった。
「…………………。」
月娘を乗せた馬車を見送っている間。
強く芽生えた気持ちだけが壬氏を支配していた。