【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
「…私…宦官にもそう伝えたわ…。」
月娘の手が強く握られたのが見えた。
「月娘…大丈夫だから…。」
「何が?!」
月娘が叫んで壬氏を睨んだ。
月娘が何を言っているのかは分かっている。
彼女は宦官達や官女達に体を確認されたのだ。
まだ10歳の子供が大人に囲まれて、体の隅々を確認された。
前帝が手を付けていないか。
情事の痕は残っていないか。
この部屋にこうして壬氏が入れたのだから、何も無かった事はすぐに分かった。
だけどそれが幼い月娘をどんなに傷付けた事か。
何故月娘がこんなに傷付かなければならないのだろう。
自分の腕の中でか細く泣く月娘を見て、壬氏は自分に対して怒りが湧いた。
月娘を守っているつもりだった。
どんなに女人を集めても、月娘が埋もれる訳が無かった。
それどころか、一際綺麗に咲く華に見えたのだろう。
自分がそう見える様に。きっとあの老人も。
壬氏の背中に耐えがたい悪寒が走った。
月娘を抱き締めていなければ、その場に蹲って叫びたい位だった。