【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
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西宮で、皇太后の部屋の外で壬氏は待っていた。
「!!」
部屋のドアが開くと宦官の医者が出てきたので、壬氏はすぐに部屋に入った。
「月娘!!」
壬氏が部屋に入ると、月娘は寝台の上に座っていた。
その顔は真っ青な顔で呆然と一点を見つめていた。
壬氏はその月娘の顔に一瞬固まったが、すぐに月娘を抱き締めた。
しかし月娘はそんな壬氏にも反応を見せなかった。
皇太后と女官達も部屋から出ていくのを確認して、壬氏は月娘の顔を覗き込んだ。
「月娘。もう大丈夫だから。」
月娘は壬氏を見ようともしなかったが、壬氏はそれでも月娘の顔に触れながら声を出した。
「…瑞…私…。前帝に何もされてないわ。」
ボソッと月娘の声が聞こえて、壬氏は目を大きく見開いた。
月娘の抱く腕が震えて、言葉の意味が分かると更に強く月娘を抱き締めた。
「分かってる…。ごめん月娘…。」
月娘に謝りながら壬氏は涙が出た。
今、月娘が何に傷付いているのか、痛いほど分かったから。