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【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】

第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②


事の真相はこうだった。



『殿下。こちらの簪を私だと思っていつも持っていて下さい。』

『………………。』

その言葉と一緒に差し出された簪を、壬氏はいつもの笑みで受け取った。



月娘からの言葉だったら、嬉しくて舞い上がりそうだが、恐ろしい位になんの感情も湧かなかった。

貰った簪を仕舞うでも無く、壬氏は手に持ったまま歩いていた。

部屋に戻ったら高順に渡して何も無かったことにするのが、いつもの壬氏の行動だった。



『皇太子殿下。』

部屋に着く前に、また声をかけられた。

『………………。』



いい加減にうんざりした。

月娘は呼ばれなければ、こうして勝手に会いに来る事も無い。

会いたい人には会えないのに、どうして会いたくもない人達はこうして勝手に会いに来るのだろう。



内心そんな事に不満を覚えながらも、壬氏の笑顔はこの位では崩れない。



『素敵な簪ですね。どうしたのですか?』

『……………。』

ちょうど自分で処理するのも面倒な品物だった。

壬氏はニッコリ笑って声をかけて来た女に簪を渡した。
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