【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
こんなに腹が立ったのは初めてだった。
誰のために今まで皇室に仕えて勉強をしてきたのだろう。
全てが馬鹿馬鹿しく思えて怒りを抑えられない。
「月娘様…。」
月娘が人に対して怒りを露わにしたのはこの時が初めてだった。
初めて見る月娘の姿に、僑香は戸惑いながらかける言葉を見つける事が出来なかった。
そしてこの月娘の所作は宇春から大臣へ。
大臣から皇室へ。
壬氏の元まで届くのに時間が掛からなかった。
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「……………。」
壬氏の前には折れた簪がハンカチに包まれて机の上に置かれていた。
月娘が折ったと言うその簪を見ながら壬氏は顔を青くしている。
「……誰が、誰に簪を贈ったって?……。」
「あなた様から宇春様へです。」
「………………。」
壬氏は宇春の名前を聞いても、顔すら思い出せなかった。
しかし、その折れた簪には見覚えがあった。
「あ。アレか。」
壬氏は何かを思い出した様に声をあげて高順は頷いた。