【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
庭に咲く牡丹よりも美しく、月娘は中庭に置かれた椅子に腰掛けてこっちをジッと見ていた。
その傍に僑香と。
また息を止めるほどに美しい夏潤が同じ様に宇春を真っ直ぐと見ていた。
夏潤に見つめられて宇春はその顔を赤く染めた。
(……随分と気の多い事…。)
そんな宇春を見て、月娘は目を細めた。
いやしかし、相手が夏潤なら仕方ない事だろう。
剣術に励む様になった夏潤は体がさらに大きくなり。
黒い癖っ毛の髪が無造作なのもまた。
その男らしさを引き立てるモノだった。
「来られるなら先に手紙でも送ってくれたら良かったのに。」
そう言いながら月娘はニッコリ笑って宇春に言った。
しかし、急な訪問でさえも非の打ち所がないその姿に。
宇春は顔を顰めた。
「月娘様とは中々宮中で会えないので…。」
「イラッ。」
宇春の嫌味にすぐに反応したのは僑香だ。
それに引き換え月娘は眉一つ動く事は無かった。
隣の夏潤に至っては面白そうに笑っているから、そっちの方が月娘を苛立せた。