【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
「欧陽大臣の馬車がうちに?」
月娘は話を聞いて嫌な予感しかしない。
欧陽大臣の愛娘・宇春(ユーチェン)もまた、同じ様に妃教育を受けているからだ。
月娘は宇春とはいい記憶がない。
いつも月娘を敵対視し、何かと張り合って来る子だった。
(訪問者が欧陽大臣にしろ、宇春にしろ。面倒くさいわね…。)
そう思いながら、月娘は壬氏から貰った手紙をそっと片付けた。
赤い潜門の側まで来ると、宇春は一瞬止まった。
潜門から見える中庭には、今が見頃の牡丹の花が美しく咲いていた。
薄桃色や白い牡丹。
この庭は季節ごとに咲く花も変えているのだろう。
こんなに立派な牡丹を咲かせているのは、後宮以外では見た事がなかった。
その中庭だけでも、枋家の完璧な性格が現れている。
簡単に踏み入れられない敷居を越えられたのは、また彼女も高位官僚の娘だからだろう。
それでもこの中庭に入るさいは、彼女でも息を呑んだほどだ。
強い牡丹の花の匂いの先にその庭の主がいた。