【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
「だから言ったろ。皇太子にとって妃候補はお前だけじゃない。」
「…夏兄様(ハ兄様)…。」
落ち込んでいた月娘の前に現れたのは、鄭夏潤(チョン・ハユン)だった。
夏潤は月娘を見下ろすとニッコリ笑った。
「ただいま、俺の小可愛(可愛い子)」
そう言って月娘をグリグリと抱き締める。
「夏兄様!いつまでも子供扱いの呼び名は辞めて下さい!!」
「そうですよ。それに月娘様に気安く触れてはいけません。」
「何だ僑香。お前も寂しかったか?」
2人に諌められても夏潤はどこ吹く風。
次に僑香に手を伸ばして、月娘と同じ様にグリグリと顔を撫でた。
「きゃあ!やめて下さい!!」
僑香が顔を真っ青にして夏潤に怒っている姿を見て。
月娘は少しだけ壬氏への煩わしさが消えて、思わず笑みが出た。
軍の訓練生に入った夏潤は、住まいを枋家から軍の宿舎に移していた。
彼が帰って来たのは久しぶりである。
「そういや、もうすぐ客人が来そうだぞ。帰って来る途中にクソ遅い馬車を追い越して来た。アレは欧陽(おうよう)大臣とこの馬車だったな。」