【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
そう聞きたくても、壬氏の体が離れて。
壬氏はやはり他の女人の元に戻ったから。
月娘はそれ以上その光景を見たくなくて、ゆっくりと彼らに背を向けた。
「瑞月様…。」
「うるさい。黙ってろ。」
諌める様な高順の言葉を壬氏は遮った。
今自分が何をしたのか十分分かっている。
この3年間、自分の気持ちを制して。
やりたくもない政治をし。
月娘を隠す為に、会いたくもない官僚の娘達とも交流を持った。
その全ては、自分と月娘の為だった。
なのに、たった1つの行動で、その全てが無駄になる所だったのだ。
皇太子の気持ちは枋太師の娘に向いている。
そんな噂を出さない為に、今の失態をどんな風に自分が巻き返さなければいけないか分かっている。
ますます月娘には会えなくなる。
自分で自分の首を絞めている様だった。
自分と月娘の為だと言い聞かせてきたのに。
壬氏はさっきの月娘の笑顔を見て不安になった。
感情を全て押し殺した様な、壬氏が他人に向ける様な笑みを。
いつから月娘にさせていたのだろう。