【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
「!!!」
月娘が目を伏せた瞬間に、壬氏の手が月娘の顔を掴んだ。
壬氏の手に導かれる様に、月娘は顔を上げて壬氏を見た。
見上げた壬氏の顔は、目を歪ませていてとても機嫌が悪そうだった。
(……何で?)
月娘はその壬氏の気持ちが分からなかった。
今自分は皇室が求める女人を上手く演じていられたと思ったからだ。
困惑した月娘の顔に壬氏の顔が近付いた。
高順が止めるまもなく、壬氏の唇は月娘の頬に触れた。
薄い布越しでも、その柔らかい感触が伝わった。
その光景を見た全ての者達の時間が止まった様だった。
誰も声すら上げずに、ただその一枚の絵画の様な美しい光景を見守った。
「…瑞……どうしたの?」
唇で触れた後に、壬氏の顔がスリッと月娘の頬を掠めた。
自分を抱き締めている壬氏に月娘は困惑の声を漏らした。
「… 月娘…。俺だけの月娘。」
壬氏は確認する様に、月娘の耳元で囁いた。
瑞…。
なら貴方も同じ様に私の瑞なの?
そう聞きたかった月娘の言葉は声には出なかった。